高齢者に関わるしごとがしたくて作業療法士になるなら、介護施設で働くのはとても魅力的ですよね。
この記事では、介護老人保健施設で作業療法士として5年間働いた筆者が、介護老人保健施設の作業療法士のしごとを解説します!
この記事でわかること
- 介護老人保健施設について
- 介護老人保健施設で働く作業療法士の仕事内容
- 介護老人保健施設で働くメリット
介護老人保健施設とは?
介護老人保健施設は、高齢者や介護がひつような人々に対して、専門的なケアやリハビリを提供する施設です。
自宅に帰ることを目的とする介護施設なので、自立した生活を送ることができるよう入所者は全員リハビリを行います。
働く職種として医師や看護師、介護士がいるのはもちろんですが、作業療法士、理学療法士などリハビリ専門職が必ず配置されているのも特徴です。
どんな人が利用するの?
介護老人保健施設は病院と自宅の中間施設として利用する方が多いです。
例えば、脳卒中になって病院に入院したけど、右の手足に麻痺が残ったまま退院しなければいけない人がいたとします。
リハビリをもう少し続けたいけど、病院は入院期間が決まっているので退院しなければなりません。
本人も家族も不安を抱えたままの退院となりますよね。
このような場合、退院先を自宅ではなく介護老人保健施設にすることで、継続してリハビリを続けられます。
その他にも、自宅での介護や看護生活が一時的に続けられなくなった方でも、短期間だけ利用(ショートステイ)することができます。
誰でも入所できるの?
介護老人保健施設に入所するには条件があります。
原則65歳以上で「要介護1」以上の介護認定を受けていないと入所できません。
ただし、40歳から64歳の方でも脳卒中などの特定疾病(*)による要介護認定を受けていれば入所が可能です。
*特定疾病に関する参考資料
厚生労働省ホームページ 「https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html 」
介護老人保健施設の入所期間は?
介護老人保健施設に入所できる期間は原則3ヶ月と決まっています。
入所者は自宅もしくは施設に帰ることを目的に、運動や認知機能のリハビリを行います。
退所した後もできるだけ自立した生活ができるように、作業療法士がリハビリを通して支援するのです。
介護老人保健施設がどんな場所かイメージがついたところで、作業療法士の仕事内容を詳しくみていきましょう!
介護老人保健施設で働く作業療法士の役割
介護老人保健施設で働く作業療法士の役割には主に以下の内容があります。
- リハビリ計画書の作成
- 食事やトイレなど生活動作のリハビリ
- 認知機能のリハビリ
- 自宅訪問(家屋調査)
- カンファレンス
それぞれの仕事内容について、具体的に説明していきますね!
リハビリ計画書の作成
入所時のからだや心の状態や現在どれくらい介助が必要かを検査し、その人に必要なリハビリの計画を作ります。
入所者やその家族が退所後にどんな生活を送りたいか希望を聞き取り、その人にあったリハビリ内容を作成します。
検査結果から足の筋力の低下や、記憶力低下によるトイレの場所の混乱が原因で、トイレに1人で行けない状況だということがわかりました
そこで、足の筋力をつけるリハビリや、記憶のリハビリ、トイレで実際に練習などをリハビリ計画書に盛り込み、トイレ自立に向けて支援を行います。
食事やトイレなど生活動作のリハビリ
作業療法士は生活の中で実際に困っていることに対して、リハビリを行う職種です。
食事、トイレなどで介助が必要な生活動作に焦点をあて、原因となっている体の機能や認知機能にリハビリを行います。
それでも改善がみられない場合は、福祉用具などの道具を使ったり、机や椅子を調整するなど本人以外の環境を整えたりもします。
その他必要に応じてご家族に介助方法を伝えるなど、退所後も自立して過ごせるよう生活の支援をおこなうのです。
認知機能のリハビリ
介護老人保健施設に入られる方は80〜90代が多く、物わすれなどの記憶力や注意力の低下がみられる方が多いです。
また自宅との環境のちがいで混乱し、認知機能が落ちてしまう可能性もあります。
そこで記憶や注意力を促すリハビリを通して、現在の認知機能がこれ以上低下しないように支援していくのです。
具体的には、折り紙やパズル、計算などの頭の体操を通して認知機能リハビリを行います。
また、対象者が昔経験したことを思い出す「回想法」というリハビリも効果的とされています。
他にも、病院とは違い集団でのリハビリができるので、昔の歌を歌をグループで歌ったり、体操をしたりなど、他者との交流を交えたレクリエーションをおこない、認知機能の維持・向上につとめています。
自宅訪問
入所時や退所時などにご自宅を訪問し、実際に生活している家の環境を確認します。
この際、段差がどの場所にどの程度あるか、手すりはついているか、階段は使用するかなどご本人が自宅の中で過ごす場所や動きをチェックします。
また、ご家族に会える貴重な機会なので、ご家族に入所前のご本人の様子などを確認することも目的です。
実際に生活している環境を確認することで、よりご本人の生活に沿った具体的なリハビリの内容を検討することができます。
カンファレンス
介護老人保健施設では定期的に医師、看護師、介護士、作業療法士、理学療法士、介護支援専門員などの専門職が集まって会議(カンファレンス)を行います。
入所した際や退所前などにカンファレンスを行い、各専門職の情報を共有し合うのです。
カンファレンスの中で共通の目標を立て、目標に対してそれぞれの役割を計画書に落とし込みます。
介護老人保健施設で作業療法士として働くおすすめの理由
筆者は介護老人保健施設に5年間勤めましたが、この5年間はとても働きやすかったなと感じています。
筆者が感じるメリットを3つご紹介しますので、介護老人保健施設で働くことを検討されているなら参考にしてください。
残業が少ない
筆者が勤めていた介護老人保健施設ではよほどのことがない限り、ほぼ定時で帰ることができていました。
これは筆者が勤めていた施設に限らず、他の施設でも同じような話を聞くことが多いです。
スタッフ数が少ない分、密に連携が取りやすく相談が気軽にしやすいことが影響しているように感じます。
また子育て世代が多いこともあり、皆で協力して勤務時間内に終わらせようとする雰囲気がありました。
子育て世代が多く理解を得られやすい
スタッフは子育て世代が多いので、こどもの病気や発熱など急にお休みや早退が必要になった時にとても助かっていました。
持ちつ持たれつといった雰囲気があり、こどもの急変に対しお互いに協力し合える環境です。
介護老人保健施設は子育て世代が集まりやすい印象があります。おかげで仕事とプライベートのどちらも程よく頑張れました。
病院を退院した後(維持期)の支援を経験できる
病院では患者様が回復しやすい時期でもあるため、リハビリを積極的にかつ十分な時間をかけて行い、退院まで支援します。
ただ、退院した後の様子を知ることは難しく、「退院した〇〇さん、今どうしてるかな…?困っていないかな?」と気になっていました。
介護老人保健施設では、入所の他に通所リハビリテーションがあり、自宅から施設に通ってリハビリを受けることができます。
そこで、病院時代には分からなかった実際の生活の具体的な困りごとを知ることができました。
さいごに
「介護老人保健施設は病院よりもスキルアップができないんじゃないか?」といった疑問も聞かれますが、そんなことはありません。
どんな場所で働いても、自分次第で知識と経験値は無限に増やすことができます。
仕事とプライベートをバランスよく両立したい方、そしてとにかく高齢者に関わりたい方にとって、介護老人保健施設での勤務はオススメですよ!
作業療法士の資格に興味が湧いたら、次の記事も参考にしてくださいね。